梅香園では定期的に介護職員らの研修が行われています。
米口施設長自ら講師を務めます。
今回はその一端を紹介。
■みなさん、普段どんな排泄介助を行っていますか?
「人として生まれた以上、おむつなんて誰もしたくないんです」米口施設長はそう言い切って研修を始めました。
まずパッドを広げて光にかざして見ます。次にパッドをつかんで強く振り下ろして再び光にかざすと、水分を吸収するポリマーが一方に偏るのが分かります。ポリマーがない部分は、吸収力が全くありません。多くの人がこうした形でおむつをまじまじと見ることはないでしょう。でも、ここに介護のポイントのひとつが隠されているといいます。パッドのあて方次第で、吸収力のある部分の位置がずれ、漏れにつながることがあります。そして大きなおむつが必要になり、常時はずせなくなる…と悪循環に陥る場合があるのです。誰もがしたくないというおむつ。その特徴を知ることで介護に工夫の余地が生まれ、おむつに頼る生活から脱却できるきっかけになるのです。
■だから、私はおむつをはずしたい
介護が必要な方が、通常の暮らしを取り戻すには、介護職員が少しの手間を増やすことで可能です。リビングまで車椅子を押して行っても、車椅子のままで食事はしない。きちんとリビングの椅子に移るのを手助けし食事をとって頂く。そんな取り組みを毎日続けることで、身体を動かす力が少しずつですが前進します。転倒や骨折なども防ぎます。では、おむつゼロに必要なものはー。少し専門的になりますが、水分摂取、栄養、運動、排便を管理して、定期的にトイレに座る環境を作ることで改善につながると米口施設長は説明します。そうしたことを続けることで、ずっと下を向いたままだった方の表情が明るくなり、前を向いて食事が取れるようになったり、おむつに頼りきりだった方が、トイレで排泄できるまで回復するのを何度も経験してきたと言います。
■介護職員の本来の仕事
では、介護の仕事とはなんでしょう。研修ではそんな根本的なことについても考えます。車椅子を押す、おむつ交換…。これらは誰にでもできること。資格はいりません。目的は違うところにあると米口施設長は説きます。車椅子から歩行へ、自分で食事ができるようになる。おむつではなく自分でトイレにいけるようになる。普通の生活を取り戻すための自立支援が、介護職員の本来の仕事だと言います。特別養護老人ホームは「終の棲家」ではなく、人が再び人間らしい暮らしを取り戻すための場所なのです。それを手助けすることが、米口施設長が20年間介護の第一線で実践してきた取り組み「おむつゼロ」の介護施設づくりです。
■やりがい、地位向上に向けて
歩行困難な人を毎回トイレにご案内し、便器に座って頂く。介護経験の長い職員にとっては、おむつ交換を続ける方が、自然なことかもしれません。なかなか効果がでないと、不満にもつながります。介護士の負担はおむつ交換より増えるように思われますが、実は負担は減ると言います。おむつがはずれることで、本来備わっている身体や脳の機能を呼び戻すことにつながるからです。一朝一夕では結果はでませんが、諦めないことが大切です。米口施設長がこれまで勤務してきた施設でも「おむつゼロ」の介護に、待ったをかける職員がいた時代もあったそうです。しかし、要介護の方の状態が改善することは介護職員のやりがいにもつながる。それが、介護職の地位や待遇向上、離職防止にもつながる。そう信じて施設内外で講師を続けているそうです。
研修の最後に「今日の研修を通して改めて考えてほしい。自分たちのユニットで、自分がされて嫌なことをしていないか。話し合ってもらいたい。職員に知識があれば、おむつは必要じゃない。まずは知ることが大切です」その言葉で締めくくられました。
スーツ姿なのに、白いスニーカー履きの米口施設長。現場と一体となってご利用者さんの暮らしを支える日々です。
プロフィール
氏名:米口真人 (よねぐち まさと)
所属:社会福祉法人やすらぎ福祉会 特別養護老人ホーム梅香園 施設長
略歴:神戸市中央区 脇の浜高齢者介護支援センター・特別養護老人ホームケアポート神戸
(平成11年)デイサービス相談員、介護職員、SS相談員、特養相談員を経験
神戸市北区 地域密着型介護老人福祉施設さつき園「あきの荘」(平成23年)
おむつゼロや下剤・向精神薬、機械浴廃止等を達成
H27年より在宅入所相互利用を開始(西日本初)
神戸市北区 特別養護老人ホーム恵風園(平成28年12月)
新設特養において、入居時からのおむつゼロを開設以来実施中
神戸市北区 特別養護老人ホーム梅香園(平成30年10月)
神戸市北区 特別養護老人ホーム梅香園 おむつゼロ達成(平成31年1月)
講師等★全国老人福祉施設協議会・神戸市老人福祉施設連盟主催
介護力向上講習会 神戸分校(認知症理論・常食化理論)助言者
★三田市ケアマネ協会主催 『認知症ケア』講師
★社会福祉介護従事者海外派遣プロジェクト(ベトナムホーチミン)
看護大学及び現地老人ホームにおいて『排泄ケア』講師
★姫路市・金沢市・高松市・宇都宮市:『排便コントロールセミナー』講師
★神戸市北区ケアマネージャー連絡会主催:『在宅入所相互利用サービス』講師
★たつの市主催:『在宅介護者向け排便コントロール勉強会』講師
★佐用町主催:パネルディスカッション『自立支援介護の目指すもの』パネリスト
★日本自立支援介護学会主催 日本自立支援介護学会学術大会
発表テーマ『特別養護老人ホームからの在宅復帰』
★パワーリハビリテーション研究会主催:自立支援介護&
パワーリハビリテーション学会
発表テーマ『排便コントロールと向精神薬の廃止について』
★神戸市老人福祉施設連盟主催:サービス向上委員会
発表テーマ『フットケア(ASケア)によるADLとQOLの改善について』
★神戸市老人福祉施設連盟介護士会主催:『自立支援介護への取り組み』講師
★その他:おもに兵庫県内の高齢者施設・大学等において、排泄関係等の研修を実施
(約30施設以上)
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社会福祉法人やすらぎ福祉会 特別養護老人ホーム梅香園
TEL078-595-2001 FAX078-595-2003
E-mail:masato-yoneguchi@yasuragi-swc.or.jp