梅香園で介護職員として働く傍ら、芸人「天満屋 学笑(てんまや・がくしょう)」としてボランティア活動を続ける小畑学さんが、コロナ禍で中止していた舞台に2か月ぶりに立ちました。約15分の太鼓、歌謡芝居、腹話術の3部公演をこなし、施設のご利用者さんを感動の渦に巻き込みました。
今から26年前、奥様が亡くなられたことがきっかけでボランティアを始めた小畑さん。病床の奥様に何もできなかったという後悔から、芸を学び高齢者施設で披露するなどの活動を始めました。最初に始めたのは、腹話術。慣れない裏声を出すのに苦労しました。移動中の車のなか、入浴中、隙間時間を有効に使いながら練習に励みました。次に南京玉すだれ、手品、太鼓、落語…とひとつずつ芸を身につけ、気付いたら近所の幼稚園、小学校、地域の福祉会館からも声がかかり、たくさんの人達に見ていただきました。梅香園で働くきっかけも、こうしたボランティア活動の繋がりからです。
まん延防止措置が解除されて2か月ぶりの舞台。小畑さんは「緊張します。でも、とにかくみんなに喜んでもらいたい。この緊張感がたまりません」と舞台袖で気分を高めます。
舞台が始まりました。小畑さんの表情が一変し『天満屋 学笑』という一人の芸の達人に変わります。しっかり鉢巻を巻き、背筋をピンと伸ばし両腕を広げどーーん。どどーん。と太鼓を叩きます。まだかまだかと待っておられたご利用者さんが、一斉に身を乗り出しました。さすがです。太鼓の音に、ご利用者さんは一瞬で心を奪われました。
次に、歌謡芝居では戦争で息子を亡くした高齢の母親に扮しました。舞台裏では、すばやくもんぺに着替え、メイクもします。この間5分。額に背中に汗をびっしょりかきながら背を丸くかがめ首を斜めに小さく傾け、杖をついてみんなの前に登場。
セリフひとつひとつに重みがあります。学笑さんがセリフを発する度にご利用者さんは大きくうなずき、年老いた母が息子に一目会いたいと泣き崩れる場面では、男性のご利用者さんが目にいっぱい涙を浮かべマスクで涙を拭う姿もありました。
すべての演目を終えた学笑さんの顔には充実感が漂っていました。